多重債務に陥った場合の解決手段のひとつに、「自己破産」があります。
自己破産が認められると債務を弁済する必要がないので、人生をリセットするという意味では有効な手段と言えるでしょう。
しかし、自己破産後の人生にはペナルティはまったくないのでしょうか?
破産前に所持していたクレジットカードは利用停止になるともう二度と作れないのでしょうか?
今回は、自己破産とクレジットカード審査に関して解説していきます。
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自己破産とは?
自己破産とは、どのような法的手段なのでしょうか?
まずは自己破産について簡単に解説していきます
どのようなときに自己破産をするのか?
破産というのはもともとは債権者側が申請するものです。つまり、債務者が支払いをしない場合に資産をすべて処分して債権者に分配するのが目的です。
しかし、資産をすべて処分しても債権金額が残る場合は、免責によって残りの債務を返済する義務を免れることができます。
「自己破産」は資産を持たない債務者が、自ら破産を宣告することで免責というメリットだけを得る目的で行います。
もともと資産がないので失うものがほとんどない上に、返済をしなくてもよいのですから債権者にとっては踏んだり蹴ったりです。
もちろん、何でもかんでも免責になるわけではありません。
例えばギャンブルや投資の失敗、浪費による借金は免責の対象外ですし、返済能力がある場合も免責は認められません。
目安としては、借金総額の1/36を返済できる収入があれば、自己破産はできません。
まとめると自己破産できるのは、資産を処分してから、収入と借金総額、借金の原因などの一定条件をクリアしている場合に限ります。
自己破産によるペナルティ
自己破産した場合、債務者には具体的にどのような不都合があるでしょうか?
まず最初に言っておくと、市民権(選挙権、被選挙権など)の剥奪といった社会的な制裁はありません。
自己破産を申請してから免責が確定するまでは「資格制限」といって、一部の職業については働くことができなくなります。
そのうち一部を紹介すると、
・弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・公安委員会委員・公正取引委員会委員・宅地建物取引業者・証券会社の外交員・商品取引所会員・貸金業者・警備員・質屋・生命保険募集員・損害保険代理店・信用金庫等の会員・役員・一般労働派遣事業者とその役員・日本銀行の役員・旅行業者
などですが、免責が確定すれば(6ヶ月~1年経過後)、再び同じ業種の職業に就くことは可能です。
一般的な会社員や公務員などは該当しないので、ほとんどの場合は職業に関してのペナルティはありません。
また、自己破産したことが一般人にバレてしまうことも基本的にはありません。
自己破産をして免責が確定した事実は、官報と本籍地の破産者名簿(資産があり破産管財人が付く場合だけで手続中のみ)に記載されます。
官報は、ほぼ毎日発行している国の広報で、最近ではインターネットでも閲覧可能ですが、一般人がこれを閲覧することはほとんどありません。
このように、たとえ自己破産をしても、公的には生活に影響するようなペナルティはほとんどありません。
しかし、クレジットカードや融資の審査には大きな影響があります。
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個人信用情報機関と自己破産情報
クレジットカード会社は、個人信用情報機関の情報を参照してカード審査をしています。
自己破産の情報も個人信用情報機関に登録されるので、自己破産をすると一定期間はクレジットカード審査に通らなくなります。
では、自己破産の記録は一体いつまで個人信用情報機関に残るのでしょうか?
個人信用情報機関に自己破産情報は何年残る?
まず、個人信用情報機関は現在3社あります。
- クレジット系列のCIC
- 消費者金融系のJICC
- 銀行系のKSC
の3社です。
この内CICとJICCは指定信用情報機関と登録していて、つまり互いの会員情報を共有しています。
銀行系のKSCについては、CRINシステムというものでCIC、JICCとネガ情報(事故情報)の一部を共有しています。
各情報機関の自己破産情報の取扱は次のとおりです。
CIC・JICCは5年保存
過去には独自に官報情報を掲載していましたが、現在は行われていません。
自己破産情報は加盟会員が登録したものを記録しているだけなので、事故情報扱いでデータ保存期間は5年。
KSCは10年保存
KSCは独自に官報情報を取得して登録するため、データ保存期間は10年。
個人信用情報機関のデータ共有
KSC以外の2社は5年経過すれば自己破産の情報は消えますが、ここで疑問となるのはKSCの自己破産情報が他2社に伝わるかどうかという点です。
結論から言うと、KSCがCRINシステムを通して提供しているネガ情報は「延滞、代位弁済、取引停止処分、強制解約」などで、自己破産情報は含まれません。
つまり、KSCに加盟している銀行子会社のクレジットカード会社、あるいは直接銀行が発行するクレジットカードに申込した場合は、10年以内は自己破産が原因で却下される可能性が高くなります。
ただし、同じ銀行系クレジットカード会社でも、三井住友カード・JCB・三菱UFJニコスはKSCには加盟していないので話は別です。
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自己破産でクレジットカードは利用停止?
クレジットカードを持っている人が自己破産した場合、どの時点でクレジットカードが使えなくなるでしょうか?
クレジットカード利用停止のタイミング
そもそも自己破産するような状況であれば、クレジットカードを持っていても支払いは延滞していると考えられます。
61日以上延滞してCICに異動情報として登録するときには、すでにカードは強制解約(利用停止)となっているでしょう。
まれに支払いが遅延していなくても自己破産となるケースもありますが、その場合は弁護士から通知が届いた時点でクレジットカードは強制解約となります。
自己破産の免責が確定すれば、すべての債務を支払わなくてもよくなるので、クレジットカード会社はカードの利用停止が遅れるほど免責額が増えてしまいます。
必然的にクレジットカード利用停止のタイミングは早くなります。
破産で利用停止となったクレジットカード会社は二度と利用できない?
自己破産の情報は個人信用情報機関では5年ですが、免責の対象となったクレジットカード会社は自社データとして自己破産情報を保管します。
つまり、免責の対象となったクレジットカード会社、消費者金融会社、信販会社の利用は5年経過してもできなくなります。
では、対象のクレジットカード会社は自社データを何年保管しているでしょうか?
帳簿類の法定保管期間は7年ですが、それ以上保管してはいけないという決まりはありません。
カード会社に勤務する詳しい人間に聞いたところ10年以上はデータ保管しているそうなので、自己破産情報も最低10年は保管されています。
破産後にもう一度同じクレジットカードを作る場合は、クレジットカード会社に情報開示をして確かめることをおすすめします。
クレジットカード審査では自己破産情報は絶対的な審査落ち要素
厳しいですが、自己破産の情報があればクレジットカード審査に限らず、すべての与信会社から却下されると考えて間違いありません。
自己破産の免責決定は、裁判所がその人物の返済能力のなさを認めたことになるからです。
債務金額を完済せずに免責を受けたことによる最も大きなペナルティが、最低5年間はクレジット・融資といった後払いのシステムを利用できなくなるということなのです。
まとめ
自己破産のペナルティは、無借金で生活している人もいることを考えるとペナルティとは言えないかもしれません。
しかし、融資やクレジットカード利用に慣れた人にとっては辛いことです。
まして信用を失ったという事実は5年以上かけても完全に消すことはできません。
自己破産に陥るほど無計画な返済をせず、クレジットカードは計画的に利用することを普段から心がけましょう。
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